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日本の文化と「鬼瓦」

飛鳥時代に大陸から伝わったいにしえの鬼瓦

  • 目次
  • 第一章 6世紀
  • 第二章 7世紀
  • 第三章 8世紀前半
  • 第四章 8世紀後半
  • 第五章 10世紀
  • 第六章 鎌倉時代後期
  • 第七章 安土桃山時代
  • 第八章 室町中期
  • 鬼瓦BLOG

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第三章 8世紀前半

 8世紀になると、鬼面鬼瓦が出現するが、それらは新羅系と百済系に大別できる。
 太宰府とその周辺遺跡から出土している鬼面鬼瓦は、新羅系といえる。縦長あるいは台形の基盤に小ぶりの宝珠円紋で縁取りをし、丸いどんぐり目とまるい鼻をもった鬼の顔が瓦いっぱいに彫られているのだが、これらの特徴が鬼面鬼瓦の制作が盛んであった新羅の遺跡から出土した鬼瓦と酷似しているからである。

 一方、この時期造営された平城京で用いられた鬼面鬼瓦は、百済系といえるだろう。
 吊り上がったアーモンド型の目や、逆立つ体毛、豪快に伸びたあごひげ、肩や頭蓋が描かれないことなどが特徴としてあげられる。百済最後の都・扶余からみつかった石板タイルの意匠と同じく、鬼か想像上の神獣と思われる生き物の全身像が彫られるという以後に例をみない特殊な図柄をしている。それらが百済から近畿に伝播したことを裏付ける資料は見つかっていないが、類似点が多いので何らかの影響関係はあったのではないだろうか。

 ちなみに、平城京所用のそれと同じく、すそ広がりのアーチ型の基盤に鬼の全身を彫った鬼瓦は、他にも唐招提寺や興福寺、薬師寺などから出土している。これらは8世紀も後半になると、鬼の顔面のみをあらわした意匠に変化する。しかし太宰府出土の新羅系とは一線を画し、基盤は丸みを帯びたアーチ系で鬼の目は吊り上がったアーモンド型となっており、顔のつくりが似ていることから、前の獣身紋からの変化であることが覗える。

 ここで、我が国の鬼という文化を探るために、文学史料を参照してみる。
 まず「日本書紀」では「鬼」という字は「モノ」あるいは「オニ」と読まれている。
 平安時代に入っても、「古今集」や「源氏物語」では「オニ」で統一されることはなく、「カミ」「モノ」「オニ」など読み方は複数ある。
 鎌倉時代成立の「今昔物語」や「宇治拾遺物語」をみると、「シコ」「カミ」「モノ」「オニ」とある。
 古代の「鬼」は、目に見えないものを指していた。馬場あき子氏の説によると、平安末頃から「モノ」と「オニ」の使用は分化してゆき、「モノ」は感覚的な霊の世界を、「オニ」は「目には見えないが実在感のある対象」をさすようになったという。7〜8世紀頃の鬼瓦をみてみると、鬼面に輪郭がないことがわかる。方形や台形の瓦の基盤に、異形のものの顔のパーツのみが浮き上がっている。かたちのない霊魂や精霊のようなものが、瓦の基盤に憑依しているように見えないだろうか。あるいは、風のように実体のないものの一瞬の表情を捉えたかのような勢いを感じないだろうか。

 ふたつの大きな丸いどんぐり目や、逆巻く毛などによって、人間の顔と同じパーツを使っているにしては人間らしくない顔をしている。この頃の鬼面は、どちらかというと、人間よりも獣に近い印象を受ける瓦が多い。
 平安時代、寺院に用いるものから、宮殿や役所の屋根を飾るものに用途がひろがり、領地や政治上の験担ぎのような意味をこめて、守り神として生活実感のあった精霊を屋根に配したのかもしれない。

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